はぁ、とまた気の抜けた返事をすると、電話の向こうで、けらけらと笑っていた。

『ところで、奈緒ちゃん。あの写真の女やねんけど』

「高松さん、知らないって」

『そうやねんけど、どっかで見たような気もするねんな』

「え?ほんとですか?」

『うーん・・・あの顔というよりは、鼻というか、口というか』

「えぇ?目とかじゃなくって、鼻とか口?」

『そうそう、なんっか、覚えがある気がするねんなー』

うーん、と頭をひねった。高松の携帯から、岸田さんの呼ぶ声が聞こえた。

「あ、そろそろ仕事ですか?」

『おー、これからまだ収録があんねん』

「がんばってください」

『ありがとー。奈緒ちゃんのために、がんばるわ!』

そう言うと、プチっと電話が切れた。
さっき、高松の言っていたことを今里と桜橋に伝える。

「鼻と口、ですか・・・」

「はい、さっき電話で、そう言ってました」

「うーん・・・」

テーブルの上においてある、写真としばらくにらめっこをした。
言われてみれば、なんだか引っかかるものがあるような・・・ないような。