***** 奈緒's View *****

電話が終わったあと、九条と一息ついた。テレビを見ていると、九条の携帯がなった。

「はい、九条。・・・はい、・・・・・・ほんとですか?・・・・はい、・・・・・・はい、わかりました、失礼します」

九条のほうを見ると、少し緊張した面持ちで、私を見てきた。

「今里さんから連絡が。犯人は、まだ捕まっていないんですが、書き込みをした犯人の特定ができたそうで、今から、顔写真をこっちに持ってくるって」

「ほんとですか」

「うん。名前は、田辺洋子。聞いたことある?」

聞かれて考えてみたが、まったく思い当たる名前がない。
首を横にふるふるっとふった。

「そっか。誰なんだろう、田辺洋子」

うーん、と2人でうなった。



30分ほどたって、今里と桜橋が、家に到着した。

「すいません、お待たせしました」

「いえ」

「きてすぐで申し訳ないんですが、この写真。見ていただけますか?」

今里が差し出してきた写真は、1枚の女性の写真だった。
若い女の人。年のころは、23・4くらいか。私より、若そうに見えた。

「この人が、田辺洋子さんですか?」

九条が聞くと、こくん、今里が頷いた。

「・・・すいません、見覚え、ないです・・・」

何度自分の記憶をひっくり返しても、名前も、顔も。覚えがなかった。

「そうですか・・・では、こちらの写真はどうでしょうか?」

言われて差し出されたのは、画像のかなり荒い写真だ。多分、監視カメラか何かの写真だろう。

「顔・・・よく見えないですね」

「すいません。これが精一杯見たいでして」

「うーん・・・ちょっとわかんないかもです・・・」

「そうですか・・・」