***** 泉's View *****

急いで家を出た。ぎりぎり、5分前に、劇場に着いた。


ま、間に合った・・・・


はぁはぁ、と肩で息をしながら、おはようございます、と中に入っていった。

「あ、おはよう。遅かったなぁ」

のんきに堺が声をかけてきた。
多分、今朝のことを知らないんだろう。

「おはよ。ちょっと朝からいろいろあってなぁ・・・」

「何かあったんか?」

「うーん・・・」

何から話そうかと思っているときに、つい、奈緒の制服姿を思い出し、にやけた。

「・・・きも」

「きもって失礼な」

「顔、顔。ひっどい顔してんで」

あわてて、顔をぺたぺたっと触りながら、軽く、頬をぺちっと叩いた。


仕事も無事に終わり、楽屋で一息ついていると、マネージャーが入ってきた。

「お、ちょうどいい2人ともそろってるね。さて、昨日の話の続きだけど。考えてくれた?」

マネージャーの一言に、一気に血の気が引いた。

「・・・まさか、お前。忘れてた?」

頭を抱えてうずくまる泉を、信じられない、といった風に目を見開いて見つめた。

「はぁ。おまえねぇ。なんでこんな大事な事を」

「ちょ、ちょっと待って。ちょっとだけ」

そう言って、携帯を取り出して、電話した。携帯にはメールが入っていた。きっと、すぐに電話に出るだろう。そう思っていたが。
・・・何度コールしても電話に出ない。

「出ない・・・」

「まぁまぁ。生活の場を東京に移すわけじゃないんやし。今回は受けてもいいんじゃね?」

はぁぁ、と深いため息をついた。それも、そうだなぁ。と考えてみた。


東京での仕事は、俺にとってはとってもいいことだ。多分、奈緒の性格を考えたら、絶対に受けろって・・・いうやろうなぁ。