電話を切ったあと、刑事さん2人も家を出て行った。
はぁ、とため息をつくと、泉が頭をぐしゃぐしゃっと撫でてきた。

「大丈夫、俺がついてるやん。それに、ため息ついたら幸せ逃げるで??ほら、逃げんようにすってすって!」

また、同じようなことを聞いた。笑いがこみ上げてきて、思わずくすっと笑ってしまった。

「お母さんも言うてた」

すぅっと息を吸って言うと、へぇ、と泉が言う。

「俺は、師匠がそう言うてたから」

「師匠?」

「そう、お笑いの師匠。・・・高松さんのお父さんにあたる人やで」

へぇ、と言った後、お父さんか、とふっと思った。

「あ、そういえば、泉君は今日、仕事は?」

聞くと、泉がはっとした顔をする。

「やっべ、今日は朝から仕事やった!」

「な、何時から!?」

「いや、今日は、9時になんばの劇場入りせなあかん。こっからやったら、歩いていっても10分かからんくらいやから、大丈夫やろう」

泉はほっとしているが、私はほっとできなかった。

「でも、下にはマスコミが大勢おんねんで?大丈夫なん?」

そういった瞬間、泉はまた、はっとした。

「やっべー・・・」

頭を抱えてしまった。