知っているのは、明日香と、会社の同僚2人。ただ、マンションの場所まで、となると、同僚2人は、なんとなくは知っているが、来たことはないから、と付け加えて言った。

「わかりました。ご協力、感謝します」

「あ、あと、もう一点、伺いたいんですが」

なんでしょうか?と聞くと、今里は続けた。

「脅迫電話やメール、手紙など、そういったものは来ていたりしますか?」

言われて首を横にふった。そういった類のものは一切きていない。

「できれば、犯人が捕まるまで、別の場所にいていただきたいんですが、かまいませんか?」

「別の場所、ですか?」

「はい、今の場所は犯人に知られてしまっています。それに、どこから情報を聞きつけたのか、マスコミも大勢います。ここは、今回の犯人以外にも、それになりうる人たちに、あなたの所在がばれたということになります」

「そうか・・・」

「なので、できれば、別のところへ避難していただくのが一番ありがたいのですが」

そういわれて、泉が、じゃぁ、と自分の家にと申し出てきた。

「え?でも、そんな、迷惑はかけられんし」

断ろうとすると、泉は首を振った。

「こんな状況やからこそ、できれば俺のそばでおってほしい。どこか、別の場所におって、もしもそこでなんかあったらと思ったら怖すぎる」

じっと私を見つめてくる。
今里が、コホン、と咳払いをした。

「ちなみに、泉さんのご自宅のセキュリティは?」

「マンションですが、オートロックで、エレベーター・廊下には、それぞれ監視カメラが設置されています。オートロックの解除はカードタイプの、このキーがないとはいれませんから、合鍵等で中に入るのはまず無理です」

なるほど、と言った後、少し考えてから、桜橋が口を開いた。

「できれば、1人、警官を護衛代わりにつけたいのですが」

「護衛、ですか?」

「はい。やはり、どれだけセキュリティが万全でも、絶対ということはありませんから。せめて、1人はそばで身を守るために、護衛として、配備したいんです」

そういわれて、泉は少し難しい顔をする。
それもそうだ、自分の家に、自分以外の誰かと、彼女を一緒に住まわせることになるのだから。