「そんな・・・私は、だれかれかまわず、そのことを話してたわけじゃないです。本当に、言っても大丈夫だってわかっている人にしか、話してません。そんな、疑うようなまね・・・」

俯いてしまう。そんな人はいない。絶対に。
そう思ったから話したのだ。
なのに、そんな。

「奈緒?たとえば、やで?」

つんつん、と泉が、私の肩をつついてきた。

「奈緒が明日香ちゃんと携帯で話をしていました」

なにを突然言い出すんだろう?と首をかしげながら聞いていた。

「そのときに、明日香ちゃんが、俺の名前も一緒に出していたとする。で、そのときに、奈緒の家に、明日香ちゃんが遊びに行くってことで、場所を聞いていました」

「うん」

「明日香ちゃんは何も思わず、電話を切り、奈緒の家に向かう。で、さらに、明日香ちゃんが入っていったマンションと、同じマンションに、俺が入っていったとする」

「うん」

「たまたま、本当に偶然、俺のファンが、明日香ちゃんの会話を耳にして、後をつけていった。すると、その後に、マンションに現れた、俺の姿も目撃してしまった」

「・・・うん」

「さて、今回の犯人と同じで、ネット上に、それを知ったやつが書き込みをしたとする。ここで、ばれた原因は、明日香ちゃんになる。けど、明日香ちゃんは、何か悪いことをした?」

言われて首を横にふった。たまたま、そういった人に聞かれ、しかも後をつけてこられたんだ。明日香は悪くない。犯人が悪い。

「刑事さんは、そういった可能性をすべて踏まえたうえで、捜査をするから、教えてほしいって言うてるんやで。わかるな?」

言われて頷いた。

「ほら、奈緒。もしかしたら、その人たちやって危ないかもしれんのやから」

そういわれて、奈緒は小さく頷いた。