桜橋の言葉に絶句した。
言っている意味がわからない。

「どういう、ことですか!?私、殺されるほど、誰かに恨まれるとか、そんな覚えは――――」

言いかけたとき、今里が私を制止した。

「ピースの高松さんとは、どういうご関係ですか?」

「は?」

「お笑い芸人の、高松さん。ご存知ですよね?」

「はい、友人ですが・・・」

ふぅ、とため息をつく今里。

「今回の犯人は、どうも、その高松さんの熱狂的なファンのようでね。ネットの掲示板に、ここの住所と、書き込みがあったんですよ」

さぁっと青ざめる。

「あなたの姿の特徴もね。でも、運の悪いことに、たまたま、その容姿に似た人がいて、あなたと勘違いされ、刺された」

「うそ・・・・」

「なので、できれば、あなたからも、詳しい話を伺いたいんですよ」

「はい、わかりまし・・・・!」

しまった、今はうちには泉がいる。どうしよう。
一部屋しかない。隠れる場所なんてどこにもない。

「あの、今すぐじゃなきゃだめでしょうか?」

「?ええ、すぐに済みますので。何か、問題でも?」

どうしたものかと、考えあぐねていると、後ろから、泉がひょっこり現れた。

「奈緒、どうした?」

「い、泉君!」

名前を呼んで、しまった!と思ったが、後の祭りだ。

「えぇ!?あ、あなたは!」

桜橋が、泉の正体に気づいた。こうなったら、こんなところで話をするより、中に入ってもらったほうがいい。

「すぐ開けます。入っていただいていいですか」

チェーンをはずして、刑事2人を中へと迎え入れた。