「・・・・悪いけど、もう、帰ってくれへんか?ピアスも見つかったし」

「え!?」

「俺は、愛ちゃんとはつきあわれへん。飲み会の席では、先輩や後輩もおったし言われへんかったけど。俺、今付き合ってる子がおるから」

きっぱりと断ると、愛の肩がわなわなと震えた。

「・・・さっき出て行った子ですか?」

「え?」

「下で、すれ違いました。女の子と。その子泣いてた。・・・・ねぇ、あんな子より、ずっと。私のほうが泉さんのこと、理解できる。泉さんの重荷にならない!」

力強く愛は言った。
しかし、泉の愛を見る目は冷たかった。

「俺には奈緒しかいない。帰ってくれ」

「じゃあ、どうしてキスしたの!?」

「それは・・・・」

愛に言われて言葉に詰まった。

「・・・ばらしてやる」

「え?」

「泉さんに押し倒されて、キスされたって、ばらしてやる」

愛の言葉に眉をひそめた。

「そんなこと聞いたら、あの子。どう思うかしら」

「・・・・・・・・」

「ばらされたくなかったら、私と付き合ってよ」

愛の顔が、悪魔のように見えた。
自分のまいた種だ。責任は自分にある。

「ばらしたきゃ、ばらせばいい。俺には、奈緒しかいない」

ぐっとこぶしに力を入れた。
決めたんだ。俺は、嫌われても、さげすまれても。それでも、奈緒が好きだから。そばにいるって。

「ほら、帰れよ」

ぐいぐいっと腕を引っ張って、愛を部屋の外へと連れて行った。

「帰ってくれ」

「い、いずみさ・・・!」

愛が言い終わらないうちに、ばたん。と扉を閉めた。
深いため息が出た。