***** 泉's View *****

奈緒に腕を振り払われた瞬間、すべてを拒絶されたような気がした。
どうしてこんなに、タイミングが悪いんだろうか。

高松さんとのことを話してくれて、そして。奈緒が信じてほしいと言った。だから、俺は、奈緒のことを信じると、そう、言いたかっただけなのに。

チャイムが鳴った。玄関のチャイムだ。ドアを開けると、そこには愛がいた。

「・・・・なに?」

ひどく今は、機嫌が悪かった。
当然といえば当然だが。

「もー。泉さんってば、オートロックあけてくれないんだもん。ちょうど、ロックがあいたから、そのままここまできちゃった」

笑いかける愛の顔に、妙に腹が立った。
しかし、愛が悪いわけじゃない。わざとやっているわけではないんだ。タイミングが悪かっただけ。

「忘れ物、だっけ」

うんうん、と頷く愛。

「あがってもいい?」

「・・・どうぞ」

しぶしぶ部屋に上げた。

「お邪魔しま~す」

お邪魔します、か。ほんとに邪魔だったよ、あのタイミングは。


愛にピアスの特徴を教えてもらい、一緒に手分けして探した。
リビングをくまなく探したが、どこにもそれらしきものが見当たらない。

「ほんまに俺のうちでなくした?」

「たぶん。だって、泉さんのうちを出てた後に気づいたんだもん」

うーん、と、うなる愛。
そのとき、ふっと奈緒がつぶやいた言葉を思い出した。

「ベッド・・・・」

まさかと思い、寝室へと向かった。
ベッドの上をよく探してみる。

「・・・あった」

まさか、奈緒はこれを昨日見かけたんだろうか?もしかして、何か誤解させた・・・?

「泉さぁーん??ありましたぁ?」

ベッドに腰掛ける泉のところへ、駆け寄る愛。泉は、見つけたピアスを差し出した。

「これか?」

「あぁ!そうそう、これこれぇ!」

うれしそうに、耳につける愛。

「ありがとー!泉さん、だぁいすきぃ♪」

そういって愛が抱きついてきた。