高松に、相手が泉であることだけ伏せて、昨日の出来事や、今日の出来事を話した。かれることのない、涙が、ずっと、あふれていた。

「・・・ごめんな」

高松の口から出てきた言葉は意外なものだった。
びっくりする奈緒をよそに、高松は続けた。

「昨日、俺が、考えなしに遊園地なんかに連れてったせいや。でなかったら、こんな風に喧嘩することやってなかったやろうし」

申し訳なさそうに言葉を続けた。

「ちゃんと、何か聞かれたら、否定しとくから」

そういって肩をぽん、とたたかれた。

「・・・いえ、私の方こそすいませんでした。高松さんに迷惑かけて。私がもっと、しっかりしてればよかったんです。もっと強かったら」

とまらない涙を、必死で拭った。

「今から、俺の家にこーへん?って誘いたいところやけど。多分、そんなことしたら、余計に話がややこしくなってまうもんな」

高松が苦笑いしながら言った。

「奈緒ちゃんは、彼氏と、よりを戻したいんやろ?」

言われて頷いた。
だけど、今となっては、戻れるかどうかもわからなくて、不安しか残っていないが。

「・・・家まで送ってったるよ。そのくらいは大丈夫やろ?」

そう言ってくれた、高松の申し出はとてもうれしかったが、甘えるわけにはいかない、と、首を横にふった。

「高松さんに甘えてばっかりじゃ、だめやから」

無理にでも笑った。これ以上、高松にも迷惑も、心配もかけたくなかった。
悲痛な表情を浮かべる高松。

「なぁ、そんな無理して笑うなよ」

高松が抱きしめてきた。でも、今は、その手を振り解く気にはなれなかった。

「俺はな?本当に、心のそこから、奈緒ちゃんには笑ってほしいねん。そんな。そんな無理して笑ってるとこみたって、全然安心できへん」

抱きしめる力が強くなる。

「俺じゃ力になられへんか?どうしても、力になることはできひんか?」

高松に言われて、うつむいた。このままじゃ、また、高松に頼ってしまう。それに、きっと。泉の元に帰れなくなる。そう思った。