走って玄関へ向かった。
もう、ここにいるのが辛い。

「奈緒!」

名前を呼ばれたが、今は泉の顔を見ることができない。
必死でこらえている涙が、あふれてしまう。
急いで靴を履いて、玄関の鍵を開けた。

そのとき、後ろから腕をつかまれた。

「やだ!」

叫んで、腕を払った。
はっとする。
泉の方を見ると、愕然とした表情を浮かべていた。

「―――――っつ!」

そのままドアを開けて、急いで家を出た。
エレベーターに乗って、1Fへと向かう。
ドアが開いて、そのまま走ってマンションを出た。

オートロックの扉のところで、愛、と呼ばれた女の人が立っていた。
きれいな人だった。とても、自分なんか、足元にも及ばない。
そう思った。

「ふっ・・・・・!!!!」

涙がこぼれた。どうしようもないくらい。
とにかく走った。すべて忘れてしまいたかった。
何もかも、すべて。

気がつけば、昨日、大泣きをしていた公園にたどり着いていた。泣きながら走ったせいか、少し頭がくらくらした。ベンチに腰をかけた。

泉に出会ったのは、ほんの3日前。
そう、たったの3日前だ。
付き合い始めたのは2日前。

日数だけ見れば、驚くほど短かった。
泉の何を知っているのだろうか。
自分は、泉の何を。

知っていることなんてほとんどなかった。ただ、優しく、甘えん坊で、どうしようもないくらい、好きだということだけ。

昨日、あんなに心配をかけたのに。今日は一方的に話をして、逃げ出した。


「うぅ・・・っく、ふっ・・・・っく」


声を殺して、ひたすら泣いた。どんなに泣いても、涙が止まることはなかった。次から次へとあふれ出してきた。