泉はうつむいたまま、こっちを見てくれなかった。
目が涙でかすんできた。
だめだ、泣いちゃ。
ぐっと、必死でこらえた。

「信じてほしい」

もう、これ以上、何もいえない。
後は、泉がどう思うか、だ。

「奈緒、俺・・・」

泉が言いかけたそのときだった。インターフォンがなった。
私も泉も、インターフォンの方を向いた。
顔を見合わせる。
無視して、泉は話を続けようとしたが、また、なった。

「----・・・・・・っ!」

ぱたぱたと、泉はインターフォンへと向かった。
受話器をとって出る。

「はい!」

ぱっと画面が映った。そこには女の人の姿があった。

「・・・愛ちゃん!?」

『あ、泉さん?どぉもぉ♪あのぉ、私、昨日泉さんちに忘れ物しちゃったみたいでぇ』

ニコニコ笑いながら話している。
あの声は、昨日、インターフォンに出た、電話の後ろでも聞こえた声だ。

「忘れ物って?」

『ああ、ピアスを片方、落としちゃったみたいで』

その言葉に、昨日ベッドで見つけたピアスを思い出す。
まさか。

「ベッドの・・・・」

「え?」

泉に聞こえたのか、聞き返された。

『あけてもらっていいですかぁ??』

だめだ、今、ここにいるのは辛すぎる。
自分のしたことは、責められることで、泉に何を言われても仕方がない。
だけど。今ここで、こんな場面を見たくない。

泉が、ガチャッと受話器を置いた。
私は荷物を持った。

「泉君。私、もう帰るね。ごめんなさい」

ちゃんと、昨日のことは話した。
その上で、どう判断するかは泉次第だ。
もう、どうでもいい。



正直、そう思った。