***** 奈緒's View *****

泉の家に着いた。荷物を置き、ソファに腰を下ろした。

ちゃんと、高松とのことを話さないと。

そう思うと、少し気が重くなった。

「はい」

泉がコーヒーを入れてくれた。

「ありがとう」

一口、こくん。とすすった。
おいしい。

深呼吸をする。
大丈夫、泉はわかってくれるはずだから。
もう一度深く息を吸った。

「泉君、あのね」

泉の目をじっと見る。泉の目も、何かを待っているようだった。

「昨日のこと、ちゃんと話してへんかった」

泉は小さくうなづいた。

「昨日は、一人で勝手に、いろいろ誤解して、心配をかけてごめんなさい」

不安が膨らんでいく。本当は、黙っていたい。
本当は自分でもわかっている。悪いことをしたと。

「辛くて、泣いた。そのとき、高松さんが、思いっきり泣かせてくれた」

泉の表情がくもった。

「泣き止むまで、じっとそばでいてくれた。それから、気分転換が必要だと、遊園地へ連れて行ってくれた。少しでも、私が笑えるようにって」

泉の顔が下を向く。
このまま話せば、失うかもしれないと思ったが。
それでも、ちゃんと話さなくてはいけない。
泉が、私のことをどう思ったとしても、隠してはいけない。

「・・・泉君も、もう、知っとるかもしれんけど。私は昨日、高松さんと遊園地に行ったのは事実です」

はぁ、と泉のため息が聞こえた。
泣きそうになる。

「でも、報道されとったような、抱き合ってたとかいうのは違う!高松さんに抱きつかれたけど、でも。私は抵抗しとった!離れようとしたけど、でも、力が強くて、勝てんくて。でも、それ以上に何かあったとか、そんなことは絶対にない」