その日の夜、家に帰るとどこからともなくいい香りがした。 私が台所を見ると、義父が何かを作っている。 「―――おぉ、真琴ちゃん。夕ご飯もうすぐできるからね」 私に気づいた義父は、楽しそうに笑ってそう言ってくる。 その笑顔に私もつられて笑った。 「着替えてくるね。手伝うから、疲れたら座っててよ」 「そうかい?じゃあ待ってるよ」 そう言って火を止め、いすに座る義父。 ほんの少し顔色が悪く見えるのが気にはなったけど、私は何も言わず着替えに向かった。