「だから俺は誰にも心を許せなかった。それでも俺に寄ってくる奴ばっかで、………真琴が初めてだよ。俺から逃げようとする奴は」 次の瞬間、篠宮さんの視線が私を捉えた。 ゆっくりと手を伸ばし、私の頬にそっと触れる。 「俺のそばにいろよ。…いや、俺がいてほしいんだ」 ―――私の頬を撫でながらそう言うのと同時に、風が私たちを包む。 心をかき乱すようなその風に、高鳴る鼓動を隠しながら私は篠宮さんを見つめていた。 …私だって初めてだよ、そんなこと言われたのは。