「―――広域総合病院までお願いします」 車に乗った私がそう言うと、彼は少し驚いたような顔で私を見た。 しかし、私はそれにも気づかずに今にも震え出しそうな手を握りしめるのみ。 …そうでもしていないと泣き出してしまいそうで怖かったんだ。 「おい、笹倉。…行き先は本当にここでいいのか?」 病院にまもなく到着するところで静かに聞いてくる彼に、私は一言だけ返した。 「………家族が入院していますから」