そう聞く声はかすかにうわずっていて、緊張しているようだった。



「…仕事忙しいからね。いないよ」


すると、義父は窓の外をゆっくりと眺めだした。


日が傾いてしまっている空はだんだん漆黒に覆われ始めて、この病室ごと飲み込んでしまいそう。
…恋人どころか友達らしい友達すらいない私は、こういうときなにを言ったらいいか全くわからなくて黙ったきりになった。



「そうか。…そういう人ができたときは、ぜひ連れておいでね」




………なにかを悟ったかのような一言。
その声の響きの寂しさに、私は曖昧な返事しかできなかった。