「素直に生きなさい」 凛と響くその声に、私はドキッとした。 女の人は立ち上がると、私の手を取って私を見つめる。 「―――その人を好きでいることを諦めないで、まっすぐ生きなさい。…じゃあ、私は行くわね。あなたに会えてよかったわ」 それだけ言うと、その人はさっと医務室を出て行ってしまう。 お礼も言えないまま。 名前も聞けないままに。 「…ハンカチ、借りっぱなしだ」 私の手に握られた綺麗なハンカチ。 まるであの人のように、凛と輝いていた。