ありふれた恋を。


何かが違う。

その“何か”が何なのかハッキリと分からないけれど、胸に変なモヤモヤが残っていた。


先生は確かに、この過去を抱えている。

だけど、それが決して“本当”とは限らない。


こんな言い方は良くないけれど、『サッカー選手を目指していたけどなれなかった』という話は良くあることだ。

だって、私のお兄ちゃんもそうだったから。


サッカー選手を本気で目指していたけどなれなかった。

でも、今もサッカーが大好きで会社の仲間たちと草サッカーをしているくらい。


だから、先生のようにサッカーをしていたことすら隠そうとするのは不思議だ。


まだ、何かあるんじゃないか。


意外と簡単に話してくれた先生に対して、新たな疑問が浮かぶ。

でも今それをぶつけるのは違うような気がして、私は曖昧に返事をする。


先生はたぶん、これで納得してもらおうとしている。


これ以上、過去の話を聞かれないように。