ありふれた恋を。


少しうつむきながら話す先生の横顔を、私はじっと見つめていた。


それなりに名の知れたサッカーの名門高校に進学し本気でプロを目指し始めたこと。

3年のとき全国大会へ出場できずに挫折して諦めかけたこと。

それでも大学に入ってからもサッカーを続け、もう1度プロを目指すようになったこと。


でも、プロにはなれなかったこと。


先生はそのひとつひとつを、ゆっくりと話してくれた。



『でも分かっちゃったんだよね。俺には結局、プロになれる程の実力はなかった。』


先生は消え入りそうな声でポツリと呟いた。

その声は弱く、表情も暗かった。



これが、先生の過去。

おそらく先生が、今でも引きずっているであろう過去。



先生が口を閉じて再びやってきた重い沈黙に、私は少しの違和感を覚えた。


なんだろう。

何かが違う。