ありふれた恋を。


「先生、サッカーしてたんですね。」


後戻りすることもできず先へ進んでみたけれど、先生は黙ったままで。

その静けさに耐えられなくなりそうだった。


パタン―。


沈黙を破ったのは、先生が雑誌を閉じる音だった。



『これ、どうしたの?』


心なしか、少し冷たく聞こえる先生の声。



「伊吹くんが持ってたんです。お兄さんが持ってたのを読んでたら見つけたって。」

『そっか。…他には?誰か見た?』

「いえ…私と伊吹くんだけです。」


そう言うと、先生は少しホッとしたようなため息をついた。



『これ、俺が貰っとくね。』

「え?…なんで?」

『うーん…記念?自分が載ってるのに見たことなかったから。』


…嘘だ。

記念なんて嘘だ。


直感的にそう思ったけれど、何も言葉を返すことができなかった。