「プロになってくれなきゃ意味がなかったって、あのときに言った言葉が全てだったんだろ?」
しばらく誰も話さない重い沈黙だけが流れる。
『ごめん。』
俺と夏波の間に立っていた瑠未が、何かを諦めたように脱力して壁にもたれる。
その一言が全てだった。
俺を本当に好きだったことも、会いたいと思っていたことも、全部全部嘘だと認めているようなものだ。
それ以上何かを聞きたいという気持ちは、もうなかった。
「どんな理由であれ結婚するって、一生一緒に居るって決めたんだろ。だったら向き合えよ。他の女なんかどうでもよくなるくらい本気で自分だけ見させてみろよ。」
顔も知らない瑠未の結婚相手を想う。
現状がどうであれ、半端な気持ちで結婚を決めたわけではないはずだ。
『好きなんですよね?旦那さんのこと。』
『…好き。』
夏波の問いにポツリと答えた声には、ちゃんと愛情が見えていた。



