「瑠未が思い出したのも会いたかったのも俺じゃなくて、自分を好きでいてくれた男だろ。」
涙を流していた瑠未の目が色を失くす。
その目を見なくても、自分の言葉が核心を突いていることは分かっていた。
「自分は愛されてるって思いたいだけだろ?だったら捨てた男なんかに頼るんじゃなくて、ちゃんと旦那に愛されるよう努力しろよ。」
どうせ全然帰って来ないし、他に女居るしと言っていた投げやりな口調を思い出す。
いくら好きだったと言われても、結局俺はその身代わりでしかない。
『瑠未さん。』
黙ったままの瑠未が、まだ動揺の残る目で夏波を見る。
ずっと自信なさ気に佇んでいた夏波が、いつの間にか凛とした目で瑠未を見ていた。
『本当に好きかどうかなんて、そんなこと考えたこともないくらい私はただ弘人さんのことが好きです。』
「夏波…。」
『弘人さんを好きっていう気持ちに、本当も嘘もありません。別れてから気付かなくても、好きだって分かってます。』
一言一言、確かめるように話す夏波の言葉が胸にすっと落ちていく。
泣きたいくらい、嬉しかった。



