『最初はサッカーで期待されてる人って聞いて、その人の彼女で居たかっただけなのかもしれない。』
怪我をして真っ先にすがった瑠未から、真っ先に切り捨てられたときのことを思い出す。
サッカーでどうとか将来がどうとかを抜きにした“1人の男”として見られていたとはまず思えなかった。
『でも、別れてから弘人のことが本当に好きだったんだって気付いた。あれから2年経っても弘人以上に好きになれる人には出会えないし、弘人以上に私を好きになってくれる人にも出会えない。』
結婚してるじゃないかと思ったけれど、本気で好きになって結婚したわけではないということにはもうとっくに気付いていた。
『だから戻りたかった…弘人のところに。ずっと会いたかったの。』
「俺じゃなくても良かったんだろ?」
どうして今更俺の元に現れたかなんて、もう聞く気持ちすら失くしていた。
結婚したけれど心の隙間は埋められずに昔の男を思い出した、それだけのことだ。
もう涙に揺さぶられたりなんかしない。



