『ねぇ、これが弘人の彼女なの?』
「そうだよ、俺の彼女だよ。」
『子供じゃん。』
そりゃ、瑠未から見れば子供に見えるかもしれない。
でも内面は、瑠未よりもずっと大人だ。
その事実をどう言葉にするかよりも、高校生だと、生徒だとバレてしまわないかが心配だった。
『本当にこんな子と付き合ってるの?なんでこんな子供が私よりも相手にされてるの?』
「いい加減にしろよ!」
一瞬の静寂の後に、俺の溜め息だけが響く。
夏波の瞳がまた心配そうに揺らいだ。
「子供じゃねぇよ。立派なひとりの女性だ。夢を諦めて女に捨てられて毎日無気力だった俺を救ってくれた大切な人なんだよ。」
『は、何それ?』
「馬鹿にすんな。俺のことはどれだけ笑ってもいいけど、彼女だけは馬鹿にすんな。」
返す言葉を失くした瑠未の険しい視線が刺さる。
一瞬だけ気持ちが揺らいだあの日の俺を責めるかのように。
濡れる瞳で俺を見つめて、俺の気持ちが再び揺らぐことを待っている。



