全部を話し終えると、弘人さんがそっと私の手を握った。
「私が好きなのはずっと弘人さんだけなの。弘人さんの中にまだ瑠未さんが居たとしても、私は離れたくないし傍に居たい。」
どこにも行ってほしくなんかない。
そう言った声は消えそうなくらい小さかったけれど、ぎゅっと握られた手の温もりがちゃんと伝わったことを示している。
『俺の中に、もう瑠未は居ないから。』
迷いのない弘人さんの声が、すっと胸に落ちていく。
『久しぶりに名前聞いて動揺したのは事実だけど、俺が好きなのは夏波だけだ。俺だって離れたくないし傍に居たい。信じてもらえないかもしれないけど…』
「信じるよ。」
今度こそ絶対。
ちゃんと伝えてくれたから。
その気持ちも言葉も、全部信じて傍に居る。
『和哉には俺からちゃんと話すから。土下座でもなんでもして、許して認めてもらうから。』
お願い。
そう言って弘人さんの胸に飛び込むと、優しくそっと包み込んでくれた。