『最近また一緒に帰ってるんだってな。自転車で2人乗りしてたって。クラスの奴らが付き合ってるんじゃないかって噂してたぞ。』
弘人さんの声はとても優しくて、責めているような雰囲気はない。
ただ、悲しそうだった。
『伊吹と何かあった?』
何もない、と言って良いのだろうか。
抱き締められたことは、その背中に腕を回してしまったことは、何かあったことになるのだろうか。
「一緒に旅行して、私の知らない弘人さんが沢山居るんだなって思ったら、瑠未さんのことが急に気になってきて…。弘人さんの中にまだ気持ちが残ってたらどうしようって不安だった。」
私はこの先もずっと、瑠未さんを越えられないままなんじゃないかと。
代わりでしかないんじゃないかと。
私が好きになった弘人さんは、そんな人じゃないのに。
そんなときに伊吹くんから声をかけられて、俺のところに来れば良いと言われたこと。
不安から少しだけ気持ちが揺らいで一緒に帰るようになってしまったこと。
でもさっき、弘人さんが好きだと伝えたこと。