『夏波、ちゃんと考えろよ。これからもこんなことが続いたら耐えらんないだろ。』
何をちゃんと考えるのだろう。
弘人さんと別れること?
話し合ってもう1度やり直すこと?
考えても考えても、今の私にはなんの答えも出せそうになかった。
これは罰なのだろうか。
一瞬でも伊吹くんに心が傾いてしまったことへの。
すぐに答えを出さなくてもいいと言ってくれた伊吹くんに甘えて、弘人さんと離れたくないと伝えることを先延ばしにしている私への。
弘人さんが前の彼女…瑠未さんと会っていたことも、キスをしていたことも、全部ショックだった。
だけどお前だってやましいことしてるじゃないかという、誰のものかも分からない声が私を責める。
私には、ショックを受ける資格なんてないのかもしれない。
『どこ行くんだ?』
不意に立ち上がった私にお兄ちゃんが聞く。
帰らなきゃ、と思った。
もうそろそろ弘人さんが帰ってくるかもしれないから。



