「お兄ちゃん、もしかして香奈さんと別れちゃった…?」
その正面に座り、私は恐る恐る尋ねる。
お兄ちゃんがこんな顔をするなんて、それしか考えられなかった。
『夏波、弘くんと別れろ。』
「…えっ?」
だから強い声で言われたその言葉の意味を、すぐには飲み込めなかった。
別れろ…?
私が、弘人さんと…?
「お兄ちゃん、何言ってるの?」
『弘くんと別れろって言ってる。』
「意味分かんない。応援するって言ってくれてたじゃん。」
言われれば言われる程、頭が混乱していく。
『俺はもう…弘くんのことが信じられない。』
「どうして?」
『終わってないんだよ。弘くんと瑠未さんは。』
初めて聞いたその名前が、弘人さんの前の彼女さんだということだけはすぐに分かった。
なのに、終わってないという意味がやっぱり分からない。
どうして?
弘人さんの中に前の彼女さんが居ないって知れたら、もう離れないって決めたのに。