ただ羨ましかったのかもしれないし、ただ寂しかったのかもしれない。

弘人さんの前であんな風に泣いてしまったことを後悔しているのかもしれないし、あれ以来弘人さんの過去と向き合おうとしない自分が嫌になっていたのかもしれない。

どうして今更こんな気持ちを持つのか、自分でもよく分からなかった。

無理に忘れなくても良いなんて、なぜそんなことを言ってしまったのだろうという想いだけをハッキリと自覚していた。



『まぁそうだよね。』


怒ったかもしれないと思った彩ちゃんが何ら変わりない様子で軽く返してくれて安心する。



『私が本当に先生のこと好きだったらこんな風に一緒には出かけられないわけだし。』


私の心を読んだかのような言葉に一瞬心臓がはねる。

一緒に出かけられるよ、遠くなら。

出かけられなくても幸せだよ、一緒に居られれば。



『あ、噂をすれば。』


そんなことを考えていると彩ちゃんが突然立ち上がり大きく手を振っている。

その先には弘人さんが居て、私が止める前に彩ちゃんは『先生〜』と呼んでしまった。