『わっ。』


そんなことを考えていると有佐が目を覚まして驚いた声をあげる。



「あぁ、ごめん。」


手を頭の上に乗せたままだったことに気付き慌てて引っ込めると、それを追うように有佐の手が動いた。

顔は机に突っ伏して右腕を枕にしたまま、左手を伸ばして俺の手を握っている。

いつか俺が有佐にそうしたように、有佐は1度ぎゅっと手を握るとすぐに放してその手をさらに伸ばして俺の頭に置いた。



『おかえりなさい。』


そしてくしゃくしゃと俺の髪を撫でる。

その目は心底愛に満ち溢れていて、俺はしばらく呆然としてしまった。

時が止まったみたいに目を離すことができない俺の目も、きっと愛に満ち溢れているだろう。


…なんだよこいつ。

なんでこんな可愛いんだよ。



「有佐のせいだからな。」


今日帰さないのは。

俺の心を捕えて離さない有佐のせいだからな。


不思議そうな表情を浮かべる有佐の手をとって身体を起こし、その表情が驚きに変わる前にそっとキスをした。