『有佐は優しいし、どんな事にもしっかりと向き合える強さがある。あと、雰囲気に流されない自分らしさも持ってる。』

「先生…。」


先生がそんなことを言ってくれるなんて…やっぱり信じられなくてただ俯いてしまう。


ずっと、先生は遠すぎると思ってた。

でも、私のことをちゃんと見てくれていた。


そんなこと言われたら、私…

もっと先生のことが…



『って、笠井先生が言ってた。』

「え…?」

『それ聞いて、そんな風に笠井先生に言わせる有佐ってすごいなって思ったんだ。だから、“私なんか”なんて言うな。』


…あれ。

急に先生の言葉が響かなくなる。


笠井先生がそんな風に言ってくれていたことは素直に嬉しいけれど、今はガッカリ感の方が強い。

先生の中には私の印象はなかったのかな。



「先生ありがとう。…私そろそろ帰ります。」

『あ、そう?じゃあ、また明日な。』


突然先生と向き合っていることがつらくなって、さよならも言わずに部屋を出た。

唐突に帰ると言った私にも先生はあっさりとしていて、自分はただの一生徒だと改めて突きつけられる。

ほんの少しでも良い。
先生の中に、何か私の印象があってほしかった。