ありふれた恋を。


家に帰ってからも先程のことが頭から離れなかった。

気分を変えようと宿題を広げてみても、全く手につかない。

いっそもうお昼寝でもしてしまおうとベッドに飛び込むと同時に、机に置いたままのスマホが音を立てる。



「もう〜」


また立ち上がって画面を見ると、そこには先生の名前が表示されていた。

一瞬で心臓が弾む。


『今夜、和哉の部屋に行く。』

たったそれだけが書かれたメール。


お兄ちゃんの部屋の合鍵は、私が預かっている。

だから私が行かない限り、先生は部屋には入れない。


なんとなく顔を合わせるのが気まずかった。

さっき先生を無視してしまったから。


だけど有無を言わせぬその一文に、私は「行きます」と返信をしてそのまま準備を始めた。


お兄ちゃんの部屋に行くって先生…絶対部屋の掃除できてないじゃん。

そう思うとおかしくて、何か作って持って行けるものがないかと冷蔵庫を開けた私は、やっぱり先生に会えるだけで嬉しいんだと思った。


それを、伝えに行かなきゃ。