『伊吹。』

「うっ、へっ?」


そろそろ帰らなきゃなんて思っていたら先生から突然伊吹くんの名前が出て、驚きで変な声が出てしまった。



『伊吹、良い奴だよな。』

「はぁ…まぁ…そう、ですね。」

『……。』

「………。」


…で、何?

どうして今、伊吹くんの話?

…もしかして、



「先生!もしかして、私が伊吹くんのこと好きだとか思ってます?」

『え?違うの?』


…やっぱり。



「ち、違います!そんなんじゃないです!それに伊吹くんは人気者だし、私なんかが好きになったとしても…」


私なんかが好きになったとしても、きっと振り向いてくれないと思う…。

そう言いかけて、まるで先生のことを言ってるみたいだなと途中で黙ってしまった。



『そんなことないと思うよ。』


ゆったりと椅子に座っていた先生が、しっかりと座り直して私の目を見る。



『確かに伊吹は人気者だけど、有佐なら大丈夫なんじゃないか?』

「え…?」


先生の言葉がすぐには信じられなくて、私の小さな声が空気中に漂う。