なぜだろう、有佐の良いところは俺だけが知っていると思い込んでいたのは。

一見地味で、どこにでもいる普通の生徒のようで。

だけど妙に惹かれるのは、有佐という1人の人としてとても良い子だからで。



『弘人先生もそう思わねー?』

「え?まぁ、そうだな。」


突然振られたことに焦ってごまかすことができず本音で答えてしまう。



「良い子だよ、有佐は。」


見ているのは俺だけじゃない。

好きだからとか気になるからだけじゃなく、一同級生にも有佐は良い子としてきちんと認識されている。


そしてそんな中から、伊吹に想いを寄せられた。



『やっぱ伊吹はすげぇな。』

『いいなー 俺も彼女ほしー!』


いつの間にかボールは動き出している。

素直に自分の気持ちを声に出せる生徒たちが羨ましいなと思った。


俺は自分の気持ちひとつ言葉にすることが許されない。



『皆弘人先生より先に彼女作ろうぜ!』

「はぁ?生意気だなー。」


今も同じ学校内のどこかで、伊吹と有佐は2人で居るのだろうか。

そんな思いを吹き飛ばすようにボールを蹴った。