男の足幅は広く、一歩一歩歩くたびに力強く荒っぽい音がした。
木で造られた和風の巨大な屋敷に男の足音はよく響いた。
「………………チッ」
舌打ちをしたのは、黒の守り神と恐れられている黒神組織の副長、黒神冬也である。
冬也は、足を進めて行くと一人の男とすれ違った。
「あれ?兄貴何でいるんだよ?」
「……いちゃ悪ぃのかよ。」
すれ違った男は、副長補佐で冬也の双子の弟、黒神春斗である。
「そういうわけで言ったわけじゃねぇよ。同盟組んでる緑川一族のお偉方達と会議だったんだろ?」
春斗は、苦笑いしながらも柔らかく答えた。
「アホらしくて抜けてきたんだよ。緑川一族は、よほど自分達の能力に自信があるみたいでな。あいつらだけで白神の戦地に飛び込むらしい。」
ため息をはきながら肩を落とす。緑川一族は緑の力、つまり自然を操ることができる一族だ。だとしても、緑川一族が破壊神の白神に勝てる勝算は、かなり低い。というか、黒神という巨大な組織でも激戦をしているのに緑川一族だけで勝てるはずがない。
春斗は、「ヒュ〜」と馬鹿にするように笑った。
「行かせるだけ行かせてみたらどうだよ?ま、負けるのは、目に見えてるけどな。」