大人の事情なんて子どもには関係ない。
そんな風に思っていた。
でも、そう甘くはなかったようだ。
私が思っていたより状況ははるかに悪かったのだ。
父の会社は一流企業ではあるがかなり危機的状況にあるようで。
それなりに重役ポストにいる父は重い責任を背負っていた。


『お父さんの会社は今、大きな援助を必要としている。言うなれば雨宮社長の援助だ。
それは世間に公には出来ない。
内密にしなければライバル会社に漬け込まれて潰されてしまうかもしれなかった。
援助をいろんな会社に申し出たが、正直苦い顔をされた。
それくらい会社は危なかった。
そんな中、雨宮社長だけは話をよく聞いてくれたそうだ。
そして、お父さんは雨宮社長と知り合いだからと、会長直々に交渉役に抜擢された。
雨宮社長は、首を縦に振ってくれたよ。
お父さんの会社はこう見えても一流企業だ。協賛となるのは悪い話ではないからね。
しかし、条件を出された。
それが、伊織君の結婚候補を見つけてくること。
雨宮の次期社長である伊織君を早く育てたがっている理由は知らないが、伊織君が18歳になったら婚約、結婚をさせたいとずっと考えていたらしい。
候補は沢山いた。
そして真琴。お前がそれに選ばれたんだ』