握り締めていた紙に
小さな穴を開け
手元に紐が無かったので
着物のほつれをちぎり
その穴にとおすと
織姫は立ちあがり
傘も持たずに外へと走りだした
外は相変わらずの土砂降り
濡れるのも気にせず
川に向かった
あの人に一番近い
この場所で願えば…
願いを書いた紙を
笹に括り付けようと
手を開いたら
その紙はもう
雨に濡れてグシャグシャで
織姫は言葉を失った
もし、さっき見た夢が
私と、彦星様の
距離なんだとしたら…
願ったって意味ないじゃない…
目頭が熱くなって
涙があふれる
でも、私はあきらめたくない…
グシャグシャになったそれを
すがる思いで笹に括り付ける
彦星様。
どうか、お願いです。
私から離れていかないで…
「会いたい…」
「…こんなところにいては
風邪を引いてしまいますよ?」



