と、あの人とすれ違う。


「(盗み聞きしてません盗み聞‥)」


言い訳を心の中で繰り返す。

すると


「あ、!」


あの人が私を見てきた。


「?!あ、ああ‥この前の‥」


いかにも今気づいたかのように
振る舞う私。


「メールなかったけど大丈夫だった?
 心配してたんだけど‥」

「あ、はい。かすり傷程度で」

「怪我してんじゃん?!
 ごめんなあ‥本当(涙)」


本当に申し訳なさそうな顔で
私に謝ってきた。


「もう、いいんですよ(笑)
 じゃ、私行きますね」

「校舎裏に用あんの???」


普通校舎裏に用なんてない。
実際、用なんてない。


「あ、いや、探検です探検!
 友達来ないんで
 ちょっと探検を‥(笑)」

「探検って‥(笑)唯らしいなあ(笑)
 んじゃね。」


そう言ってあの人は去っていった。


「(変な子だと思われた‥
  て、あれ?なんで名前知って?)」


私の名前は唯、なんて
一言も言っていないのに。


「‥」


よく考えてみると、
"ごめん"て言葉。

あの時の彰吾が言ったみたいな‥

けど、外見が違う。
どっちもかっこいいけど。

彰吾はもうちょっと
目が大きかった‥ような?

5年前の記憶が
薄れている自分に気づく。


「(彰吾‥‥‥?)」


まさか。
だって、彰吾は遠くの県に
引っ越したんだから‥。