香桜~かおりざくら~

「ただいまぁ~」
「あら?おかえり。今日は早いのね?」

息を弾ませ、玄関に飛び込む。
あ…そっか、走って帰ってきたし、いつもより早くあっち出たもんな…

「なにかあった?」
「…え?」
「変な顔してる。」

クスッと笑って言う母。
…親ってすごいなぁ~……
小さな心の変化も見逃してない。

「って!何もないし!!」

ドダドダ
階段を駆け上がる。

なんか…
あいつ…木斗に振り回されてる…
気が…する。
ムカつく。
あいつのせいで
心に変化があったみたいになってる。

別に…
気にしない。気にしてない。

「お姉ちゃん。お風呂空いたよ。」

妹の京(きょう)11歳だ。

「あぁ…うん。オーケー」

軽く返事する。

「お姉ちゃん!」
「ん?」
「聞いて!明日ね!がっこうでね!
図工の時間あるんだよ!
でね!私のいっちばん得意なやつなんだ!!」
「…へぇ、よかったね」

ちょっとオチぎみな今…
正直言ってそんな話興味ないし、
聞くのもめんどくさい。

「明日、楽しみだな~!
ねぇ、お姉ちゃんは明日、楽しみなこと
ある?」
「っえ…?」

自分が聞かれるなんて思ってなかった。

「ええ~…とぉ……」

焦る。
明日…楽しみなこと…

…友達と話すこと?
―ううん。別に。合わせてるだけで、楽しくとも何ともない。
…授業?
―んな訳ないじゃん。

んじゃ…なに…?

……木斗…?
―そ…う…なの…かなぁ…

「い、いろいろ!!」
「…そっか。」

気持ちの整理がつかず、強引に会話を終わらせた。
そんな私の心を見透かしたかの様に
妹は静かに扉をしめた。