この香桜は、上に小坂があって
その坂の下から生えているのだ。
だから、小坂から香桜の幹に乗り降りできるの。

「もう帰んの?」

いつもよりは大体5分くらい早い帰りだ。

「うん。帰ってほしくないなら帰んないけど…?」
「別に。どっちでもいいよ。好きな方にしたら?」
「…じゃぁ、帰るっ!!」

別に、木斗はイヤミで言ったんじゃないと思う。
別に、引き留めてほしかったわけじゃないし。
別に…気にしないし。

「じゃあな」

一言そう言って、
またオレンジを口に運んでいった。

たっ!
返事もせず走り出す。
…なんかむかつく……。
同電波って…
仲良くなってきたって思ってたの
私…だけなのかなぁ?
一人よがりの感違い…?
ちょっと、幼馴染みたいで、
心開いてくれてるって思ってたの…
私だけ?


「っち!」

いつもの家路を
走りながら、

精一杯のイラつきを舌にはじかせた。