それは、唐突な出来事だった。

オレが高校二年生の冬。

幼なじみが、消えた。

本当に、あまりにも突然な出来事だった。

消えたといっても、幼なじみだけが消えたわけじゃない。家族ごと。両親含め、あいつの二つ下の妹まで。

消えた。

学校からは、事情によって引っ越ししたと聞いた。でも、納得できるわけがなかった。

生まれてからずっと一緒だったんだ。


ウオイ ユキメ
魚井雪夢は、オレの一つ下の学年として生まれてきた。

あいつは四月五日に生まれ、オレは三月二十九日に生まれた。同じ病院で、同じ病室で母に抱かれ眠っていた。

学年は変わるが、それでも仲が良かった。

余談だが、あいつの名前には、魚と雪がある。オレは偶然、とある魚の名前を見つけた。鱈(タラ)だった。冗談半分でタラちゃんと呼ぶと、嬉しそうにあいつは笑ったから、オレはからかいがいのない奴だと、どこかあいつを愛しく思った。

そんな小学生のころ。当時はそんな愛しさに気づかなかった。

あいつ、雪夢は平凡で、間抜けでぼーっとした奴だった。なにかと世話を焼くほど間抜けだというわけではないが、それでもオレは世話を焼きたがった。

「とういくん、だいじょうぶだよ、ゆきめは、あるけるよ」

「おまえなぁ、怪我したときは早く消毒しなきゃダメなんだぞ?とろとろ歩いててばい菌がおまえの足、腐らせてもいいのかよ?」

「……だいじょうぶだよ、とういくんがおんぶしたほうが遅いよ」

「…………ゆきめなんかしらねーかんな!!」

「あ、まってよ、とういくん!」

あいつはぼーっとしているが、きちんと考えている奴だったから、あいつの正論になんかいもチクチク刺されたこともあった。

それでも、雪夢が愛しくて仕方がなかった。

妹のようで、守りたくて、後ろからついてくるあいつに優越感を抱く。そんなちっぽけな小さい頃。