冷ややかな視線たちが、カノジョを突き刺すように見つめた。
カノジョは、血の気の引いた顔で、じっと下を向き座っている。

キーンコーン

カーンコーン

チャイムが鳴った。
凍りついた空気が漂う教室で、みんなおのおの自分の席についた。

アンドーが教室に入ってきた。
いつもとちがう静寂の冷たさにアンドーも気づいた。
黒板の色とりどりに殴り書きされた大きな文字も見た。

「だれだ!こんなデタラメの嘘のいたずら書きしたヤツは!」

あわてて、黒板消しをにぎりしめると、アンドーはササーっと消し始めた。

全部消し終えると、パンパンっと手についたチョークの粉を払いのけた。

そして、クラスのみんなに振り返って言った。

「小学生なみの、くだらないらくがきだぞ」

いつもの、担任のアンドーらしく、軽く微笑んだ。

その笑顔で、張り詰めていた空気が一斉にゆるんだ。

「なんだーー」
「ただのいたずらガキ?!」
「マジかと思ったよ~」

すぐに、なごやかな普段の教室の雰囲気にもどった。

ガターン!!!

俺の隣の席で、カノジョがいきなり立ち上がった。

勢いで椅子が倒れ、大きな音が教室中に響いた。

全員の視線が、カノジョに集中した。

カノジョは、その時ハッキリと言った。

「黒板に書いてあったことは、事実です」