二人。
しかも逢坂さんのお友達と
「白馬君は…どうして一人でこんな広いお屋敷に暮らしていますの?」
あー‥やっぱり来ましたかその手の質問
「社会勉強のようなものですよ」
「ふふ、嘘がお上手なんですのね。」
カチャリ、と紅茶のカップを置いて笑う彼女は笑っていない。
「…紋部さんこそ、演技がお上手ですよ。」
彼女が自分の事を知らないわけがない。
紋部家の情報網は侮れないし誤魔化せはしないだろう。
「…何故、紅葉ちゃんに何も言わないんですの?」
言えるわけがない。
けれど言わなければならない。
この矛盾した思いはいつまで抱えるのだろう。
「いつかは…言うつもりなんですよね……」
「勿論です。…その後は、彼女の事をお願いします。」
泣くだろうか彼女は
きっと泣くのだろう。
そう、それ程の事を伝えるのだから。
できるのなら、言いたくない。
彼女を傷つけるのなら言わなくてもいいだろうか。彼女の為だ。
そう言えば自分が傷つかずにすむから、結局は自分の為なのか。
どうすればいい?
誰かに教えを乞おうとも答えをくれる者はいない。
俺に全てを教えてくれたあの人はもういない。


