紳士と淑女の推理紀行






ぐぃ、と引っ張った腕には切り傷があった。




浅い物だったが流れる血、出したハンカチで圧迫止血をする。




「…汚れちゃいますよ?」



「別に構わん。…コレくらいしかできんだろう。」




後は蘭子達と合流。胡桃沢が警察に連絡した。




魚沼が来て「危ない真似をするな」とお説教を受けつつ白馬を病院に連れていってもらって治療を受けた。




その帰り道、




「通り魔の犯人にはさんまさんに言って明日話を聞きましょう。」




物凄い小言を言われそうだな……




「…腕……」



「平気ですよ。浅かったので痕も残りません。」



「だが、…私のわがままのせいで傷を…」



「提案したのは俺だもん。」




包帯を巻かれた下には私がつけてしまった傷がある。




それが直接下したものではなかったとしても、罪悪感に苛まれる




もしかしたら、と思ってしまえば、ソレはすぐ身近にあるのだとわかる。



「…逢坂さん、お願いがあるんです。」




立ち止まって言った白馬の顔は俯いて見えない。



「もしこの先、俺が貴女を庇って怪我をしても……その時は、どうか気に病まないでほしい。」



「は……?」



「貴女を守るから。だから貴女は前に進んでほしい。」



「白馬、何を言っている…?何故そんな事を言うんだ。私はその傷を謝りたくて……」



「謝罪なんて必要ない。貴女が無事ならそれでいい。」




そう言った白馬の目は真剣で、けれどどこか哀しそうに。




私に訴えかけた。