紳士と淑女の推理紀行






無機質な声で、それでも芯のある言葉でそう言った。




その言葉に、
私は何も言わなかった。



だから掴んでいた彼の胸倉を離し、彼からも離れた。




彼の肩に乗っていた猫が、足下にいた。




ニャーと一音鳴いたのが聞こえた。




くるりと踵を返す。




「…どこに行かれるんです?」




乱れた胸元を直し、彼は私に聞いてきた。




「…決まってる。」



「貴女はどうしてそう面倒な事を…」



「白馬」




彼の方に視線を向け、先ほどよりも静かな声で




けれど視線だけは鋭さを帯びたまま、




「私の事を知ったように言うな。」




それだけ言って、私は外に出て行った。