ー惟牒?どこ行くの?




…紅葉?どこに行くんだい?




ー外に行ってくる




…お庭行く




…祖父の手を離して、黒い服を着た人たちから離れた。




ー母の手を離して、黒い服を着た人たちから離れた。




…縁側に座って、庭を見る。




ー塀があって、その向こうは見えない。




…足をぶらぶらと揺らしながら空を見る。




ー立ちすくんだまま、空を見る。




空はいつも通り青くて、何も変わってない。




その日は快晴で、雨なんか降っていなかった。




……ふっ…ぇっ…




ー誰かの泣き声が塀の向こうで聞こえた。




…なのに瞼にだけ雨が降り注いで




ー探偵のおじさんから貰った、沢山の紅葉がポケットにあった。




『君の名前は惟牒か。私の娘はね、紅葉って言うんだ。』



『二人とも、秋の葉っぱね。』




ーそうやって笑った二人




ー塀の側に台を置いた。



ー誰が泣いてるかわかんないけど




ーお願い、泣き止んで




カサッ‥




…木々の揺れて葉音がした。




…風なんか吹いてなかったから不思議に思って顔を上げた。




サァッー‥




…紅い紅い




…たくさんの紅葉が降ってきた。




…庭の塀の向こうの木は紅葉じゃないのに




…なんで




…紅葉が




…お父さん?お母さん?



ーごめんね、違うよ。




ー僕は、




『惟牒と紅葉が会ったら、仲良くなれるな。』








ー君に、謝りたいな。




…ありがとう。











…fin.