あの時と逆だ。
あの時は白馬は本棚に座っていて
私は白馬を見上げていた。
今度は、逆
「ごめん。」
私が本棚にいて、
白馬は私を見上げている。
「…なんで」
いるの
「元々帰国する予定じゃなかったよ。」
「…はぁ?」
「だって荷物もここに沢山あるし、誰にも言わないとか、そんな薄情な人間じゃないよ俺?」
そうだっけ
「でっでも、蘭子は」
「紋部さんには言ったのになー、依頼を受けたから一時帰国するって」
は?
訳がわからない。
頭に疑問が浮かんだ所でにゃあ、と間の抜けた声がした。
「あぁ、金田一さんにも言いましたよ?」
「猫に聞けと?」
私そんな高度な語学力持ち合わせてないんだが
はぁ、とわざとらしいため息を一つ
「…つまりアレか?私は蘭子に嵌められたって訳か?」
「ですね」
「なんでお前は私に何も言わなかったんだよ。」
そしたらあんな誤解もしなかったのに
「まぁ、ぶっちゃけ顔合わせづらかったんで」
ぶっちゃけ過ぎだろ。
「…でも、泣いてくれてたっていう事は、戻ってきて良かったって事ですよね。」
「馬鹿かお前は」
「あれ、俺泣きそう」
「行かないでって、言ったろ。」
情けない顔をして、そう頼んだんだ。
帰ってこないなら、探し出してやろうとまで思ったんだ。
今度は私が、見つけ出す為に
「いい加減そこから降りましょうよ。」
「お前の腕の中に飛び込めって?断る。」


