聞こえた声の方に首を動かす。が、誰もいない。
なんだ空耳か。
「こっちこっち。上うえー」
上?と首を上げて見れば本棚に座っている1人の青年がいた。
「なんだ幻覚か。」
「あれ?その反応おかしいですよね?」
普通は驚くとこでしょー、とけたけた笑う
「…何故そんな所に」
「いやー、この本棚の下から15段目の右から8番目の本が急に見たくなっちゃいましてね?」
「凄い記憶力だな」
思わずツッコミを入れてしまっていた。
「それで本棚の棚で本読んでたら脚立が倒れちゃって」
まいったよねー、と両手をあげてわざとらしく言う。まいってなくね?
「それで今立ち往生‥あ、座ってるか。座り往生してるんですよタスケテクダサイ。」
「だが断る。」
「何この子めっちゃ冷たい。」
なんかコイツへらへらしてる癖に一癖どころか何重にも癖がありそうで関わりたいとは思わない。
だがまぁ、ここで断って本棚の上で餓死されても困るので脚立を立て直すことはしよう。


