急いで玄関まで戻り、合い鍵をいれる。
ーキィ‥
よかった。鍵は変わっていないみたいだ。
急いで中に入り、音のした場所を探す。
ここの間取りは覚えていて、大広間のような部屋に入ってみた。
玄関から声を掛けても返事はなかった。
大広間に入った。
「…何だこれは」
辺り一面本だった。
高い天井まで続く本棚にはぎっしりと本が詰まっていて、洋書から医学書なんてものもある。
少し進むと、銀色の物体が見えて目をやると
「…脚立」
が、倒れていた。
なるほど。これが倒れた音だったのか。
音の原因と、脚立と一緒に人が落ちたわけではない事がわかり、一安心だ。
「…しかし、電気点けっぱなしで出掛けたのか?」
そう独り言を呟いた時だった。
「いますよー」
と、間の伸びた馬鹿そうな声が聞こえてきた。


